「信仰によって触れる」 ルカによる福音書8章43〜48節

 現代の医療は昔とは比べものにならなくらい進歩した。昔の医療はまじないや非衛生的な処置法も多く含まれ、随分遅れていたという印象が強い。現代の医療の主な目的は何か。
 健康寿命をのばすこと。つまり、長く健康で自立して暮らすことができるようにすること。具体的には病気の癒やし、病気の苦しみの軽減、そして、病気の予防。
 一方で、お金儲けのための病院経営。自分の実績を増やし、名声を得るための手術をする自己中心的な医者なども多くいる。
 さて、旧約聖書の神の律法の目的は、、神と隣人を愛することだった。律法には健康面においても厳しく規定されている。病気にならないように汚れた物に触れないようにすることが、また、病気に感染した者は、病気や汚れを他人に移さないようにすることが記されている。それは自らの体を病気から守り、清く保つためであり、また聖なる神に出るためでもあった。
 重い感染症にかかった者は、他者に病気を移さないために隔離する。感染者の隔離(レビ記13:45重い皮膚病にかかっている患者は、衣服を裂き、髪をほどき、口ひげを覆い、「わたしは汚れた者です。汚れた者です」と呼ばわらねばならない。 13:46この症状があるかぎり、その人は汚れている。その人は独りで宿営の外に住まねばならない。)死体を扱った後の洗浄(民数記19:11どのような人の死体であれ、それに触れた者は七日の間汚れる。 19:12彼が三日目と七日目に罪を清める水で身を清めるならば、清くなる。しかし、もし、三日目と七日目に身を清めないならば、清くならない。 19:13すべて、死者の体に触れて身を清めない者は、主の幕屋を汚す。その者はイスラエルから断たれる。清めの水が彼の上に振りかけられないので、彼は汚れており、汚れがなお、その身のうちにとどまっているからである。 19:14人が天幕の中で死んだときの教えは次のとおりである。そのとき天幕に入った者、あるいはその中にいた者はすべて、七日の間汚れる。 19:15また、蓋をしていなかった、開いた容器もすべて汚れる。 19:16野外で剣で殺された者や死体、人骨や墓に触れた者はすべて、七日の間汚れる。 19:17それらの汚れたもののためには、罪の清めのために焼いた雌牛の灰の一部を取って容器に入れ、それに新鮮な水を加える。 19:18身の清い人がヒソプを取ってその水に浸し、天幕とすべての容器およびそこにいた人々に振りかける。更に、人骨、殺された者、死体あるいは墓に触れた者に振りかける。 19:19三日目と七日目に、身の清い人が汚れた者に振りかける。汚れた者は、七日目に身を清め、衣服を洗い、体に水を浴びると、夕方には清くなる。)、糞便を野営地外に埋めること(申命記23:12夕方になって水で体を洗い、日没に陣営に戻ることができる。 23:13陣営の外に一つの場所を設け、用を足すときは、そこに行きなさい。)など、様々な健康に関する法律や儀式が含まれている。これらの法の遵守により衛生上の恩恵がもたらされた。

8:43ときに、十二年のこかたッ出血が止まらず、医者に全財産を使い果たしたが、だれからも治してもらえない女がいた。
 この女性の様な不正出血の原因は悪性の腫瘍も考えられますが、一般的に多いものは、ホルモンのバランスが崩れること。過度のストレスや更年期、また思春期に起こるものだそうです。
 彼女は多くの医者にかかったが、ひどく苦しめられた、とある(マルコによる福音書05:25さて、ここに十二年間も出血の止まらない女がいた。05:26多くの医者にかかって、ひどく苦しめられ、全財産を使い果たしても何の役にも立たず、ますます悪くなるだけであった。
 今でも大金をかけて不妊治療(人工授精)をしている女性は多い。しかし、それは肉体的にも、精神的にも、経済的にも大変な負担になる、と聞く。悲しいことに、これを食い物にする悪徳業者もいる。
 この女性は人も神も信じられない、まさに生きる望みさえ失われるような状態であった。
8:44この女が近寄ってきて後ろからイエスの服の房に触れると、直ちに出血が止まった。
 何と、自分からイエス様に近づき、後からかがんでイエス様が着ていた服の房に触れたのです。すると、直ちに出血が止まったというのです。
 服の房というのは、長い上から下まで一つの上着の裾の四隅につけていた房のことです。イスラエルが青糸で作った房は魔除けではなく、神の忠誠を示すものであった。(民数記 15:38イスラエルの人々に告げてこう言いなさい。代々にわたって、衣服の四隅に房を縫い付け、その房に青いひもを付けさせなさい。 15:39それはあなたたちの房となり、あなたたちがそれを見るとき、主のすべての命令を思い起こして守り、あなたたちが自分の心と目の欲に従って、みだらな行いをしないためである。 15:40あなたたちは、わたしのすべての命令を思い起こして守り、あなたたちの神に属する聖なる者となりなさい。)
 神への忠誠を象徴する房に、命がけですがったのです。後から後から衣の房にふれた。このことは、どうせこの人も駄目だろうが、試しに触ってみようか、というようないい加減な、軽い気持ちで触れたのではありません。それは命がけです。聖なる方に汚た者が触れる。聖なるものを汚したという重大な律法違反を犯すことになるからである。
 レビ記には、出血のある女性は汚れている、と記されている。 (レビ記15:25もし、生理期間中でないときに、何日も出血があるか、あるいはその期間を過ぎても出血がやまないならば、その期間中は汚れており、生理期間中と同じように汚れる。 15:26この期間中に彼女が使った寝床は、生理期間中使用した寝床と同様に汚れる。また、彼女が使った腰掛けも月経による汚れと同様汚れる。 15:27また、これらの物に触れた人はすべて汚れる。その人は衣服を水洗いし、身を洗う。その人は夕方まで汚れている。)何故か?血液は病気の媒体となりやすい。蚊やノミ、シラミによる感染。又、血液自体様々な病気を含んでいる場合がある。例えば、肝炎、梅毒、性病といったものです。
 だから、出血のある女性が人前に出ることは禁じられていた。勿論、聖なる神の前に出ることも禁じられていた。
 「後からふれた」と言うのは、そのような理由から、この病気の女性は汚れた者と呼ばれ、前から堂々と申し出ることなどは自分の様なものにはできにと思ったからです。しかし、彼女はイエス様をあたかも全能の神の如くに見ていた。彼女はこれにすべてをかけていた。もし見つかれば石打の刑にされるかもしれないという、決死の覚悟で触れた。それが、分からないイエス様ではなかった。

8:45イエスは、「わたしに触れたのはだれか」と言われた。人々は皆、自分ではないと答えたので、ペトロが、「先生、群衆があなたを取り巻いて、押し合っているのです」と言った。
8:46しかし、イエスは、「だれかがわたしに触れた。わたしから力が出て行ったのを感じた」と言われた。
8:47女は隠しきれないと知って、震えながら進み出てひれ伏し、触れた理由とたちまちいやされた次第とを皆の前で話した。

 多くの人がイエス様に触れた中で、この女性だけが癒された。何故か。それは、彼女が他の人々とは違う、信仰によって触れたからだ。
 それでも、この女性はイエス様が何も言われなかったら、そのまま帰ったでしょう。それでは病気は癒されても、真の救いにはならない。イエス・キリストに繋がり、永遠の命に至ることはない。しかし、イエス様は彼女の信仰がその時限りの点で終わることの無いように、点が線となるために、ブドウの木に枝がしっかりと繋がるように、彼女の信仰を公に言い表すことを求められた。

8:48イエスは言われた。「娘よ、あなたの信仰があなたを救った。安心して行きなさい。」
 イエスを信じたのである。そこに彼女の癒やしと救いがあった。
 信じる、ということは信じる対象者と一つにされる。一体化される、と言ってもいい。サタンを信じる者はサタンと一体となり、イエスを信じる者はイエスと一体になる。この女性はイエスを信じた。イエスの力がこの女性に流れ込んだ。丁度、信じることで、電気のコードをコンセントに差し込んだとたんに、電気が通るように、この女性の中にイエスの命が流れ込んでいった。
 「ちょうど鉄が火と一緒になって火のごとく真赤になるのと同じである。信じると言うことはかくも力があるものである。また、どんな良い業も信仰に及ばないのである。」(キリスト者の自由より)

 この女性はそのまま去っていくこともできた。しかし、彼女はイエスの前に進み出てすべてを告白した。このことによって、一回限りの繋がりではなく、イエスとしっかりと繋がる信仰へと導かれた。しかも、自分のような者も憐れんで下さる憐れみ深い神へと繋がった。この祝福を十分に味わうために、しっかりとイエス様に繋がっていきましょう。信じることの難しい世の中ですが、半信半疑ではなく、全身全霊を傾けてイエス様を信じていきましょう。



8:43ときに、十二年のこかたッ出血が止まらず、医者に全財産を使い果たしたが、だれからも治してもらえない女がいた。
8:44この女が近寄ってきて後ろからイエスの服の房に触れると、直ちに出血が止まった。
8:45イエスは、「わたしに触れたのはだれか」と言われた。人々は皆、自分ではないと答えたので、ペトロが、「先生、群衆があなたを取り巻いて、押し合っているのです」と言った。
8:46しかし、イエスは、「だれかがわたしに触れた。わたしから力が出て行ったのを感じた」と言われた。
8:47女は隠しきれないと知って、震えながら進み出てひれ伏し、触れた理由とたちまちいやされた次第とを皆の前で話した。
8:48イエスは言われた。「娘よ、あなたの信仰があなたを救った。安心して行きなさい。」