「愛の贈り物を携えて」 使徒言行録21章1~26節

 リオデジャネイロオリンピックで、日本中が沸き返っている。今回は予想以上にたくさんのメダルを獲得している。ものすごいプレッシャーの中で、メダルを勝ち取った多くの選手が口にする言葉は、今まで自分を指導し、支えてくれた監督やコーチ、応援してくれた家族や多くの人たちへの感謝の言葉だ。自分一人で得たメダルではない、という思いに涙する。厳しい練習の中で築かれた強い信頼の絆だろう。
 互いの信頼がますのは、辛い試練の時を共に乗り越えていくときである。それは何においても言える事ではないだるうか。夫婦において、親子において、友人において、そして教会においてもそうである。
 今日の箇所はパウロが、生活の困窮と信仰の困窮の中にある母教会・エルサレムの兄弟姉妹を援助しようと、各地の教会から集めて募金を携えて行った時のことである。

教会はどのようにして広がっていったか。
 パウロは、初め迫害する側に立っていた人だったが、劇的な改心によってキリストの福音を伝える伝道者になった。彼の三回にわたる伝道旅行によって、各地に教会が出来た。紀元50年頃までには、シリア、ガラテヤ、アジア州、マケドニア、ギリシャ、コリント、信者数はユダヤ人だけでも数万人とも言われている。この様にして教会は各地に増えていった。

教会が互いに助け合った
 初代教会では互いに教会が支え合った。現代では教会が互いに助け合うことは少ない。一つの教会の中においても、互いに助け合うことはなかなか難しい。誰かが困っている、どういう援助が必要か、どいうことが具体的にわかれば援助しやすい。誰が、何が出来るか、それぞれの持てる賜物が活かされるような体制づくりが必要である。

 そして、今日の箇所は紀元54年頃のことですが、エルサレムの母教会が再び生活の困窮に陥ったので、パウロ達は各地の教会に予め呼びかけ、集めておいた募金、援助物資を携えてエルサレムに向かったのです。これが第三回目の伝道旅行の終わりの時でした。

 教会は互いの重荷、窮乏に無頓着、無神経であってはならない。誰かが困っている、それにいち早く反応する人こそ愛の人、信仰の人である。その為にも互いの交わりが大切になっていく。

主にある交わり
21:04わたしたちは弟子たちを探し出して、そこに七日間泊まった。
ティルスではわざわざ弟子たちを探し出して、兄弟の交わりを持った。彼らもパウロたちに温かい手を差し伸べた。見ず知らずの人?を主を信じるというだけで、迎え入れて世話をするということは大変なことです。しかし、別れる時は互いの絆を強くし、共にひざまずいて祈り合った。
※レモン宣教師の故郷、アメリカの教会を訪問したとき、温かい手を差し伸べくださった。

伝道者フィリポの家で、エルサレム行きが阻止?
 預言者アガボは、パウロの帯で自分の手足を縛り、この帯の持ち主はこの様になる、そして異邦人に引き渡されると、聖霊によって示した。
 それを聞いて、同行していた弟子たちは周りの人と一緒になって、パウロのエルサレム行きをしきりに止めさせようとした。 ミレトスで エフェの長老達と別れのパウロの言葉
使徒言行録20:22そして今、わたしは、“霊”に促されてエルサレムに行きます。そこでどんなことがこの身に起こるか、何も分かりません。 20:23ただ、投獄と苦難とがわたしを待ち受けているということだけは、聖霊がどこの町でもはっきり告げてくださっています。 20:24しかし、自分の決められた道を走りとおし、また、主イエスからいただいた、神の恵みの福音を力強く証しするという任務を果たすことができさえすれば、この命すら決して惜しいとは思いません。
 聖霊は同時に、行けと、行くなの二つの相反することを言うはずがない。どちらかが間違っていることになる。行ってはダメだと言った弟子たちは人間の情に流された。(マタイ16章:ペトロへのイエス様の𠮟責16:21このときから、イエスは、御自分が必ずエルサレムに行って、長老、祭司長、律法学者たちから多くの苦しみを受けて殺され、三日目に復活することになっている、と弟子たちに打ち明け始められた。 16:22すると、ペトロはイエスをわきへお連れして、いさめ始めた。「主よ、とんでもないことです。そんなことがあってはなりません。」 16:23イエスは振り向いてペトロに言われた。「サタン、引き下がれ。あなたはわたしの邪魔をする者。神のことを思わず、人間のことを思っている。」)

 パウロと律法
 パウロ達はついにエルサレムに着いた。自分の奉仕をとおして神が異邦人の間で行われたことを詳しく話した。皆は神を讃美した。一方、あなたは、律法に反することを教えている、つまり
『子供に割礼を施すな習慣に従うな』と言って、モーセから離れるように教えているとのことであった。
 パウロが教えていたことは「律法の行いによっては義とされないということ、義とされるのはイエスの福音を信じる信仰だけである」と言うことだった。
 生まれで八日目の割礼も、様々な律法の規定を守ることも、人を義とすものではない。人間の行いによっては義とされない、ただイエスさまが命を投げ出してなして下さった十字架の罪の赦しを信じる信仰だけであると言うことでした。「私は律法によって律法に死んだ」ガラテヤ02:19わたしは神に対して生きるために、律法に対しては律法によって死んだのです。わたしは、キリストと共に十字架につけられています。 02:20生きているのは、もはやわたしではありません。キリストがわたしの内に生きておられるのです。わたしが今、肉において生きているのは、わたしを愛し、わたしのために身を献げられた神の子に対する信仰によるものです。

パウロの寛容、自由
 ※「ナジル人の誓願の規定」(民数記6章06:16あなたたちがマサにいたときにしたように、あなたたちの神、主を試してはならない。 06:17あなたたちの神、主が命じられた戒めと定めと掟をよく守り、 06:18主の目にかなう正しいことを行いなさい。そうすれば、あなたは幸いを得、主があなたの先祖に誓われた良い土地に入って、それを取り、 06:19主が約束されたとおり、あなたの前から敵をことごとく追い払うことができる。・・・・・・・・)
 4人の誓願者と一緒に神殿に行って、費用を出してやって欲しい。パウロはヤコブのこの提案に従った。これはパウロの妥協なのか。権威に屈服したのか。
 そうではなく、ナジル人の誓願は、それを守ることによって義とされる、されないという問題ではない、と判断したのです。それをしようが、すまいが自由だ、救いに関することではない、と言う観点に立っていたのです。「割礼があってもなくても問題ではない。愛を伴う信仰こそ大切です。」(ガラテヤ5:6)
 パウロからすると、そうする必要もない、と突っぱねたかったであろう。しかし、この時のパウロは違った。
コリントの信徒への手紙一「私は誰に対しても自由な者ですが、全ての人の奴隷になりました。出来るだけ多くの人を得る為です。ユダヤ人にはユダヤ人のようになりました。ユダヤ人を得る為です。律法に支配されている昼に対しては、わたし自身はそうではないのですが、律法に支配されている人のようになりました。律法に支配されている人を得る為です。」
 パウロの同胞を思う熱い愛がヤコブと長老の提案を受け入れた理由であった。同胞を助けたい、救いたいという一心がパウロを変えた。

 わたしたちはパウロではない。パウロのようにはなれない。同胞を思うそこまでも熱い思いは無い。しかし、どんなに冷たい氷のような鉄でも、燃えさかる火の中に入れると、やがて鉄は火のように真っ赤になる。キリストを信じる信仰はそのように信じる者を変えていく力がある。
 誰か一人の為に、福音が届くように、病気が癒されるように、又援助の手が差し伸べられるように、信仰を持って祈っていこう。


使徒言行録
21:01わたしたちは人々に別れを告げて船出し、コス島に直航した。翌日ロドス島に着き、そこからパタラに渡り、 21:02フェニキアに行く船を見つけたので、それに乗って出発した。 21:03やがてキプロス島が見えてきたが、それを左にして通り過ぎ、シリア州に向かって船旅を続けてティルスの港に着いた。ここで船は、荷物を陸揚げすることになっていたのである。 21:04わたしたちは弟子たちを探し出して、そこに七日間泊まった。彼らは“霊”に動かされ、エルサレムへ行かないようにと、パウロに繰り返して言った。 21:05しかし、滞在期間が過ぎたとき、わたしたちはそこを去って旅を続けることにした。彼らは皆、妻や子供を連れて、町外れまで見送りに来てくれた。そして、共に浜辺にひざまずいて祈り、 21:06互いに別れの挨拶を交わし、わたしたちは船に乗り込み、彼らは自分の家に戻って行った。 21:07わたしたちは、ティルスから航海を続けてプトレマイスに着き、兄弟たちに挨拶して、彼らのところで一日を過ごした。 21:08翌日そこをたってカイサリアに赴き、例の七人の一人である福音宣教者フィリポの家に行き、そこに泊まった。 21:09この人には預言をする四人の未婚の娘がいた。 21:10幾日か滞在していたとき、ユダヤからアガボという預言する者が下って来た。 21:11そして、わたしたちのところに来て、パウロの帯を取り、それで自分の手足を縛って言った。「聖霊がこうお告げになっている。『エルサレムでユダヤ人は、この帯の持ち主をこのように縛って異邦人の手に引き渡す。』」 21:12わたしたちはこれを聞き、土地の人と一緒になって、エルサレムへは上らないようにと、パウロにしきりに頼んだ。 21:13そのとき、パウロは答えた。「泣いたり、わたしの心をくじいたり、いったいこれはどういうことですか。主イエスの名のためならば、エルサレムで縛られることばかりか死ぬことさえも、わたしは覚悟しているのです。」 21:14パウロがわたしたちの勧めを聞き入れようとしないので、わたしたちは、「主の御心が行われますように」と言って、口をつぐんだ。 21:15数日たって、わたしたちは旅の準備をしてエルサレムに上った。 21:16カイサリアの弟子たちも数人同行して、わたしたちがムナソンという人の家に泊まれるように案内してくれた。ムナソンは、キプロス島の出身で、ずっと以前から弟子であった。 21:17わたしたちがエルサレムに着くと、兄弟たちは喜んで迎えてくれた。 21:18翌日、パウロはわたしたちを連れてヤコブを訪ねたが、そこには長老が皆集まっていた。 21:19パウロは挨拶を済ませてから、自分の奉仕を通して神が異邦人の間で行われたことを、詳しく説明した。 21:20これを聞いて、人々は皆神を賛美し、パウロに言った。「兄弟よ、ご存じのように、幾万人ものユダヤ人が信者になって、皆熱心に律法を守っています。 21:21この人たちがあなたについて聞かされているところによると、あなたは異邦人の間にいる全ユダヤ人に対して、『子供に割礼を施すな。慣習に従うな』と言って、モーセから離れるように教えているとのことです。 21:22いったい、どうしたらよいでしょうか。彼らはあなたの来られたことをきっと耳にします。 21:23だから、わたしたちの言うとおりにしてください。わたしたちの中に誓願を立てた者が四人います。 21:24この人たちを連れて行って一緒に身を清めてもらい、彼らのために頭をそる費用を出してください。そうすれば、あなたについて聞かされていることが根も葉もなく、あなたは律法を守って正しく生活している、ということがみんなに分かります。 21:25また、異邦人で信者になった人たちについては、わたしたちは既に手紙を書き送りました。それは、偶像に献げた肉と、血と、絞め殺した動物の肉とを口にしないように、また、みだらな行いを避けるようにという決定です。」 21:26そこで、パウロはその四人を連れて行って、翌日一緒に清めの式を受けて神殿に入り、いつ清めの期間が終わって、それぞれのために供え物を献げることができるかを告げた。


申命記6章
06:01これは、あなたたちの神、主があなたたちに教えよと命じられた戒めと掟と法であり、あなたたちが渡って行って得る土地で行うべきもの。 06:02あなたもあなたの子孫も生きている限り、あなたの神、主を畏れ、わたしが命じるすべての掟と戒めを守って長く生きるためである。 06:03イスラエルよ、あなたはよく聞いて、忠実に行いなさい。そうすれば、あなたは幸いを得、父祖の神、主が約束されたとおり、乳と蜜の流れる土地で大いに増える。 06:04聞け、イスラエルよ。我らの神、主は唯一の主である。 06:05あなたは心を尽くし、魂を尽くし、力を尽くして、あなたの神、主を愛しなさい。 06:06今日わたしが命じるこれらの言葉を心に留め、 06:07子供たちに繰り返し教え、家に座っているときも道を歩くときも、寝ているときも起きているときも、これを語り聞かせなさい。 06:08更に、これをしるしとして自分の手に結び、覚えとして額に付け、 06:09あなたの家の戸口の柱にも門にも書き記しなさい。 06:10あなたの神、主が先祖アブラハム、イサク、ヤコブに対して、あなたに与えると誓われた土地にあなたを導き入れ、あなたが自ら建てたのではない、大きな美しい町々、 06:11自ら満たしたのではない、あらゆる財産で満ちた家、自ら掘ったのではない貯水池、自ら植えたのではないぶどう畑とオリーブ畑を得、食べて満足するとき、 06:12あなたをエジプトの国、奴隷の家から導き出された主を決して忘れないよう注意しなさい。 06:13あなたの神、主を畏れ、主にのみ仕え、その御名によって誓いなさい。 06:14他の神々、周辺諸国民の神々の後に従ってはならない。 06:15あなたのただ中におられるあなたの神、主は熱情の神である。あなたの神、主の怒りがあなたに向かって燃え上がり、地の面から滅ぼされないようにしなさい。 06:16あなたたちがマサにいたときにしたように、あなたたちの神、主を試してはならない。 06:17あなたたちの神、主が命じられた戒めと定めと掟をよく守り、 06:18主の目にかなう正しいことを行いなさい。そうすれば、あなたは幸いを得、主があなたの先祖に誓われた良い土地に入って、それを取り、 06:19主が約束されたとおり、あなたの前から敵をことごとく追い払うことができる。 06:20将来、あなたの子が、「我々の神、主が命じられたこれらの定めと掟と法は何のためですか」と尋ねるときには、 06:21あなたの子にこう答えなさい。「我々はエジプトでファラオの奴隷であったが、主は力ある御手をもって我々をエジプトから導き出された。 06:22主は我々の目の前で、エジプトとファラオとその宮廷全体に対して大きな恐ろしいしるしと奇跡を行い、 06:23我々をそこから導き出し、我々の先祖に誓われたこの土地に導き入れ、それを我々に与えられた。 06:24主は我々にこれらの掟をすべて行うように命じ、我々の神、主を畏れるようにし、今日あるように、常に幸いに生きるようにしてくださった。 06:25我々が命じられたとおり、我々の神、主の御前で、この戒めをすべて忠実に行うよう注意するならば、我々は報いを受ける。」